石水研通信
|石水より
2017年度後期に1年生対象の生化学1を担当しました。生化学1は重要科目ですので、みんなに専門知識を習得させようと工夫しました。その心意気は感じてもらえる内容だったと思います。ヴォート基礎生化学の約300ページ分が範囲で、受講者は範囲が広くてたいへんだったと思います。採点を終えての感想です。点数分布を見ると、「ちゃんと教科書読んで自分で知識を定着していけそうなグループ」と「それなりに努力したグループ」と「教科書を全く読まないでテストを何とか乗り切ろうしたグループ」が見えました。一夜漬けでは何ともならない分量でしたから、普段の努力が反映されたのだと思います。まあまあできた、と思う人はよくがんばったと思います。イマイチだった人は、大学生活のどこかの時点でスイッチを入れて、復習してほしいなあ、と思います。生化学1は多くのことのベースになる科目ですので。
講義を通しての裏テーマは
1. 教科書を読んで、自分で専門知識を身につける方法を体得する
2. 専門知識に派生する社会とのつながりを意識する
というものでした。しつこく「教科書を読め」と言いました。自分で納得したり、わからないところをわかるようにしたり、という経験が専門家になるのに大事な経験です。また、生化学の知識がどのようなところで生かされているか、教科書以外の情報をたくさん伝えました。将来の自分の姿を想像しながら目標に向かって行く、というような、勉強のモチベーションを持ってもらえたらなあ、という想いでした。
自分が学生の頃を振り返ると、1,2年生の時はクラブ活動やバイトで全然勉強していなくて、3年生になった頃にスイッチを入れて独学で勉強し出して、4年生になって大学院入試に向けて凄まじく勉強した、という感じでした。なので、1年生の勉強していない人に偉そうに言えませんが、今回テストの出来がイマイチだった人はどこかの時点でスイッチ入れて専門家になっていってほしい、と切実に思ってます。がんばってください。
テストの受験者は320人で、5枚のテストだったので、答案用紙1,600枚になりました笑。がんばって採点したので記念に載せておきます。
|研究成果・出版物
Kato, S., Hayashi, M., Kitagawa, M., Kajiura, H., Maeda, M., Kimura, Y., Igarashi, K., Kasahara, M. and Ishimizu, T. Degradation pathway of plant complex-type N-glycans: Identification and characterization of a key α1,3-fucosidase from glycoside hydrolase family 29. Biochem. J. 475, 305-317 (2018)
タンパク質には糖鎖が修飾されて、糖タンパク質になっているものが多くあります。糖鎖はいろんな機能を果たしています。植物の糖タンパク質糖鎖はフコースやキシロースを含む特徴的な構造をしています。これまでに、この糖鎖の生合成経路が明らかになっていますが、分解経路は未解明なままでした。フコース残基を切り出すα1,3-フコシダーゼが見つかっていなかったためでした。今回、α1,3-フコシダーゼを発見しました。これまでの分解酵素の知見と合わせて、植物糖タンパク質糖鎖の分解経路を解明することができました。この論文は、α1,3-フコシダーゼの酵母での発現系を構築した北川さん(2013年修了)、その生化学的解析を行った加藤さん(2016年修了)、遺伝子欠損変異体の解析を行った林さん(2016年修了)の3人の修士論文を合わせた論文で、この3人がCo-first authorsになっています。国内外のいくつかのグループがこのα1,3-フコシダーゼを探索していましたが、石水研で見つけることができたのは、面倒なことを厭わずに、丹念に酵素基質を調製したり、糖鎖構造解析をした北川、加藤、林の研究があったからです。Biochemical Journalは1906年に英国で創刊された老舗生化学雑誌です。石水研からは初めての掲載です。きっちり解析した論文が掲載されるイメージが昔からあり、今も継続されていると思います。
岡山大学の木村先生、前田先生は、長い時間をかけて共同で研究を進めてくださいました。立命館大学の笠原先生、東京大学の五十嵐先生にもたいへんお世話になりました。ありがとうございました!
今日突然研究室を訪問してきた筆頭著者の加藤さんと(撮影石黒)。
|研究成果・出版物
Ohashi, T., Jinno, J., Inoue, Y., Ito, S., Fujiyama, K., Ishimizu, T. A polygalacturonase localized in the Golgi apparatus in Pisum sativum. J. Biochem. 162, 193-201 (2017)
植物は細胞壁にペクチンがあります。そのペクチンの分解は、果実成熟や落葉や本当に様々な生理現象に関わっています。そのため、シロイヌナズナではゲノムにペクチン分解酵素であるポリガラクツロナーゼを69遺伝子持っています。そのうち、機能が明確になっているものはまだ少ない現状があります。生化学的な解析は比較的多く行われていますが、これまでに解析されたポリガラクツロナーゼはすべて可溶性のもので、液胞や細胞質に局在しているものでした。今回、世界初でゴルジ体に発現するポリガラクツロナーゼを発見しました。
この研究は2002年に伊藤さん(2005年修了)が始めた研究で、神野さん(2008年修了)がかなりのデータを揃えました。途中、担当学生をつけられない時期が長くありましたが、井上さん(2016年修了)のがんばりがあり、論文としてまとまりました。3人の修士論文の成果が詰まってます。その間、阪大の大橋さんが終始この研究に携わり、完成させました。(一つの論文を仕上げるのはほんとたいへんです。)
ゴルジ体はペクチンを合成する場所であることが知られています。なのに分解酵素があるなんて、とても意外な発見です。どういうことなんでしょうか。不思議です。どんな役割をしているかの研究を進めています。

|研究成果・出版物
Rahman, M.D., Maeda, M., Itano, S., Hossain, M.A., Ishimizu, T., Kimura, Y. Molecular characterization of tomato α1,3/4-fucosidase, a member of glycosyl hydrolase family 29, involved in degradation of plant complex type N-glycans. J. Biochem. 161, 421-432 (2017)
植物の糖タンパク質の糖鎖はフコースという糖を含む特殊な構造をしています。そのフコースを切断する酵素が探索されています。この論文では、α1,4結合したフコース残基を遊離するフコシダーゼをトマトから同定しました。岡山大学の木村先生、前田先生の研究室で進められた成果です。両先生と共に、まだ未同定のα1,3結合したフコースを遊離する酵素を探索している途中の成果です。

|研究成果・出版物
Uehara, Y., Tamura, S., Maki, Y., Yagyu, K., Mizoguchi, T., Tamiaki, H., Imai, T., Ishii, T., Ohashi, T., Fujiyama, K., Ishimizu, T. Biochemical characterization of rhamnosyltransferase involved in biosynthesis of pectic rhamnogalacturonan I in plant cell wall. Biochem. Biophys. Res. Commun. 486, 130-136 (2017)
植物細胞壁ペクチンは複雑な構造をしていて50種類程度の酵素がその生合成に必要と考えられています。そのほとんどの酵素の遺伝子が同定されていないばかりか、酵素が実際にあるかどうかも不明なのが現状です。石水研ではそれを打破する研究を展開しています。ペクチンのラムノガラクツロナンI領域を合成するラムノース転移酵素の活性を検出しました。酵素には基質が必要ですが、ラムノース転移酵素の基質になるペクチンオリゴ糖、UDP-ラムノースを丹念に調製して、この酵素の活性を検出することに成功しました。この研究は2005年に始めたものです。途中、担当学生をつけられない時期が長くありましたが、10年以上の月日を費やしました。ペクチンオリゴ糖の調製の礎を作った牧さん(2013年修了)、その方法を大幅に改良した田村さん(2016年修了)、酵素のキャラクタライズを一気に行った上原さん(2016年修了)の3人の修士論文を合わせた論文で、この3人がCo-first authorsになっています。
世界初検出された酵素であるため、酵素の登録番号であるEC番号が新規発行されます。2018年3月に番号が発行される予定です。
立命館の溝口先生、民秋先生、京大の今井先生、阪大の大橋先生、藤山先生との共同研究で、多くの方々の協力の下、長年の懸案であった研究成果を発表することができました。ありがとうございました。この酵素の遺伝子同定の研究を進めています。
