立命館大学 石水毅研究室

石水研通信

【研究成果】植物糖タンパク質糖鎖の分解経路を解明

Kato, S., Hayashi, M., Kitagawa, M., Kajiura, H., Maeda, M., Kimura, Y., Igarashi, K., Kasahara, M. and Ishimizu, T. Degradation pathway of plant complex-type N-glycans: Identification and characterization of a key α1,3-fucosidase from glycoside hydrolase family 29. Biochem. J. 475, 305-317 (2018)

 タンパク質には糖鎖が修飾されて、糖タンパク質になっているものが多くあります。糖鎖はいろんな機能を果たしています。植物の糖タンパク質糖鎖はフコースやキシロースを含む特徴的な構造をしています。これまでに、この糖鎖の生合成経路が明らかになっていますが、分解経路は未解明なままでした。フコース残基を切り出すα1,3-フコシダーゼが見つかっていなかったためでした。今回、α1,3-フコシダーゼを発見しました。これまでの分解酵素の知見と合わせて、植物糖タンパク質糖鎖の分解経路を解明することができました。この論文は、α1,3-フコシダーゼの酵母での発現系を構築した北川さん(2013年修了)、その生化学的解析を行った加藤さん(2016年修了)、遺伝子欠損変異体の解析を行った林さん(2016年修了)の3人の修士論文を合わせた論文で、この3人がCo-first authorsになっています。国内外のいくつかのグループがこのα1,3-フコシダーゼを探索していましたが、石水研で見つけることができたのは、面倒なことを厭わずに、丹念に酵素基質を調製したり、糖鎖構造解析をした北川、加藤、林の研究があったからです。Biochemical Journalは1906年に英国で創刊された老舗生化学雑誌です。石水研からは初めての掲載です。きっちり解析した論文が掲載されるイメージが昔からあり、今も継続されていると思います。

 岡山大学の木村先生、前田先生は、長い時間をかけて共同で研究を進めてくださいました。立命館大学の笠原先生、東京大学の五十嵐先生にもたいへんお世話になりました。ありがとうございました!

IMG_4138.jpg今日突然研究室を訪問してきた筆頭著者の加藤さんと(撮影石黒)。