立命館大学 石水毅研究室

石水研通信

【研究成果】植物細胞壁ペクチンの生合成酵素を発見 糖転移酵素ファミリーGT106を発見

Takenaka, Y., Kato, K., Ogawa-Ohnishi M., Tsuruhama, K., Kajiura, H., Yagyu, K., Takeda, A., Takeda, Y., Kunieda, T., Hara-Nishimura, I., Kuroha, T., Nishitani, K., Matsubayashi, Y., and Ishimizu, T. Pectin RG-I rhamnosyltransferases represent a novel plant-specific glycosyltransferase family. Nature Plants 4, 669-676 (2018)

植物細胞は細胞壁を持っていて、ペクチンなどの多糖から構成されています。ペクチンはジャムやゼリーに日常的に使われ、漢方薬の薬効成分であることも見出されてきています。このペクチンは30~40種類くらいの糖転移酵素の作用で合成されると考えられていますが、ほとんどがまだ未解明なため、ペクチンの植物での役割がイマイチわかっていません。今回、ペクチンを合成するラムノース転移酵素遺伝子を見つけました。この酵素は糖転移酵素の一種ですが、これまでに見つかっていなかったタイプのもので、GT106という新しいファミリーであることが認定されました。この植物に特異的なGT106は非常に大きなファミリーでした。このことから、このファミリーにある多くが未解明のペクチンを合成する酵素と考えられました。そして、この遺伝子は植物の進化の過程で植物が陸上に進出した約5億年前に現れた遺伝子であることがわかり、ペクチンが植物の陸上進出に役割を果たしたと考えられました。ペクチン合成の仕組み解明に扉を開いた、と解説してくれています。大きな成果であるため、Nature Plantsという植物科学分野の高いレベルの論文が集まっている学術雑誌に掲載され、この雑誌の中でフィーチャーされ解説され、さらに2018年9月号の表紙を飾りましたいくつかの新聞やYahoo!ニュース、立命館大学のホームページなど各種メディアにも紹介されました。新着論文レビュー、月刊「化学」2018年10月号にも解説記事があります。

竹中さん(ポスドク)、加藤さん(2018年修了)、鶴浜さん(2016年修了)の貢献が大きい成果です。彼らはすごい量の実験をしました。梶浦先生、柳生さん(2018年修了)、竹田先生、武田先生の貢献もありました。名古屋大学の大西先生、松林先生、奈良先端大の國枝先生、甲南大の西村先生、東北大の黒羽先生、西谷先生には様々な協力をいただき、たいへんお世話になりました。リサーチオフィスの方々(特に中原さん)には多くのサポートをいただきました。ありがとうございました!

 9.jpgNature Plants 2018年9月号の表紙。M1の山原さんが撮ってくれた写真が採用されました。オクラは、今回の研究対象になったペクチンラムノガラクツロナンIがたくさんあり、ネバネバしています。