立命館大学 石水毅研究室

石水研通信

宮城大博士セミナー

 11月13日(月)にケースウエスタンリザーブ大学の宮城大博士に「個々のタンパク質の合成をモニターする手法の開発と応用例:線虫を用いて」と題したセミナーをしていただきました。25年に渡り、質量分析装置を用いたタンパク質の構造解析を一貫して行ってきた宮城博士。タンパク質の質量分析が構造解析にとどまらず、定量解析をすることで、生物学と関わるタンパク質研究ができることも示されてきました。今回は、個々のタンパク質の合成速度を質量分析装置を駆使して測定し、老化とともに合成量が増える一群のタンパク質を発見され、新たな生物学の分野を切り拓いた成果をセミナーしていただきました。セミナーでは、4年生、修士の学生に、プロテオミクスとは何か、易しく優しく解説してくれるところも含めて話してくださいました。宮城博士、ありがとうございました!IMG_4073.jpg

 宮城さんとは、20年ぶりの再会で、うれしい機会となりました。25年前に石水が学部4年生の時に博士課程の学生として同じ研究室に在籍されていました。在籍が重なった期間はわずか数ヶ月間だけでしたが、いろいろと細かい研究のイロハを教えてくださった方です。研究テーマは違ったのですが、いつも「研究どう?」と声をかけてくださり、いつも話を聞いてくださったことは今でも思い出されます。

 石水が学部4年生の時に、宮城さんが草津の立命館から車で5分の宝酒造(現在のタカラバイオ)で質量分析装置の担当として異動された後も研究の話を聞いてくださいました。石水がM1の時に、酵素の活性触媒残基のヒスチジン残基を同定する手法を思いつきました。活性触媒ヒスチジン残基を化学修飾したN-エトキシカルボニルヒスチジンはとてもとても不安定な化合物で、アミノ酸分析をしていては同定できないので、質量分析装置を使って同定したいことを相談したところ、気軽に協力してくださいました。朝6時に大阪の研究室に行き、タンパク質に化学修飾を起こさせ、名神高速で草津の宝酒造に向かいつつ、タンパク質を断片化し、朝9時頃から草津の宝酒造で質量分析する、という実験に付き合ってくださいました。宮城さん、業務で忙しかったはずですが、一学生の実験に丁寧に付き合ってくださいました。不安定なN-エトキシカルボニルヒスチジンの存在を示す質量数を見た瞬間は未だに覚えています。自分のアイデアで初めてうまくいった実験で、これで、研究手法をよく考えてなんとか目的を達成させる研究の進め方の一つのコツを学んだのでした。これは、私の修士論文の柱となり、処女論文ができました。

 Ishimizu, T., Miyagi, M., Norioka, S., Liu, Y.H., Clarke, A.E., Sakiyama, F. Identification of His31 and Cys95 in the active site of self-incompatibility associated S6-RNase in Nicotiana alata. J. Biochem. 118, 1007-1013 (1995)

 Citationは22で少なく、大した論文ではないですが、修士の学生がアイデア絞って成果にした論文で、一人の研究者の出発点になった論文です。バイタリティーというかやる気に満ち溢れないと達成できない成果です。このバイタリティーは宮城さんに学んだところもあります。実際に宮城さんは、宝酒造をあっさり退社され、アメリカの大学でPIになるというバイタリティー溢れる方です。今論文を読み返すと、修士の学生としては、なかなか渋い論文を作れたなあ、と感心します。今思えば、この成果は宮城さんのおかげ。今更ながらに感謝です。そんな宮城さんは、今回の草津の立命館訪問でも相変わらず私の研究の話を聞いてくださり、「すごいやん」とこちらが元気づく言葉をかけてくださり、本当に相変わらずで、それでまた研究をガンガン進めたくなりました。宮城さんには相変わらず、感謝感謝感謝でした。

 研究を始めた頃から草津に縁があったのか、としみじみしつつ。今では、タカラバイオもニプロもある草津は、四半世紀前から生命科学の研究拠点になってきたんですね。20年の時を経ても関係性がそのまんまなのはうれしかったです。お互いの研究の進展がありますように。またの近いうちの再会を願いまして。石水記す。