立命館大学 石水毅研究室

石水研通信

卒研発表会

 祝日の2月11日に卒研発表会がありました。1年弱の実験の成果発表会です。本番に強いのか、みんな良い発表でした。打ち上げは、これまでのがんばりをねぎらいあえるいい時間になりました。ほんまに心地いい打ち上げでした。いろんな先生方から、研究室では出てこなかった貴重なコメントをいただけたのは、いい機会でした。そして、同じ学科のI先生から「石水研の学生はみんなよくやっていた!」とお褒めの言葉をいただけたのはうれしかったですね。来年度は、今日発表したことを洗練させて、論文にしていきますよ。

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 実験を進めていくと、スムースにいかないことが出てきてきます。こんなときにどうするか、学んでいてくれたら、指導した甲斐があります。うまくいかない時ががんばりどころです。当初の目標とは違う結果が出てきたときに、安易に「実験を失敗しました」と報告されたことが多かったです。実験操作に明らかな間違いがあることをわかっての「失敗しました」という報告ではなく、期待した結果が得られなかったときの「失敗しました」という報告が多かったです。望み通りのデータを出すことが目的ではありません。酵素が、糖鎖が、どのようにして働いているのか、見たくて実験をしています。観察したままのことを受け入れて、そのデータを解釈する、という科学の手法に慣れていってほしいです。こんな実験データが出るべき、との思い込みが、データの解釈を邪魔してしまいます。人がこれまで考えつかなかったことを初めて観察したかもしれません。大発見を目の前にしているのかもしれません。

 解釈できるデータが出なかったとき、再現性があるデータが出なかったとき、実験を先入観なく振り返ることが大事です。自分ではちゃんと実験しているつもりやけど、一緒に実験を振り返ると、ある試薬を入れ忘れていた、とか、ここの実験はこの方法でいいと思っていた、とかそんなことがありました。先生に言われたことをそのままやっているだけでは、実験はうまくいきません。自分で研究に関する情報を得て、研究目的を理解して、それに向かって行う実験の原理を理解して、納得して実験を進めるようにならないと、どこを一番注意してやらないといけないのかわからないし、出てくるデータの解釈ができないし、実験の精度を考えてどのくらいのことが言えるのかわかりません。

 そのためにも、まずは、規則正しく早寝早起きをして朝から実験をする、土日もやるときにはやる、というふうに自分の中で「研究をするんだ」という意識が要ります。朝が弱い4年生に「朝はちゃんと来るように」と100回くらい言った気がしますww。卒業するための単位を取れたらいい、というのでは、卒業はできても、卒業後に必要となるスキルが自分に身につかない。同じように時間を割いて研究するなら、これから社会に出て活躍するためのスキルを身につけれるやり方で進めてほしいです。こういう意識を持つことがスタート。それから研究背景を理解するための勉強。実験の原理を理解するための勉強。この勉強は実験を進めながら行う。実験を進めることだけは、雑誌会の準備がたいへんでも、彼女にフラレても、オールでカラオケにいっても、やめない。たゆみない毎日の実験のみが発見につながる。そして、これを明らかにするんだという信念は持ちつつ、先入観を持ちすぎない。このバランス感覚がわかれば、実験結果の解釈も変わってきます。

 こういうことを、4年生で学んでくれたなあと実感する人もいるし、かけらでも感じた人もいるなあと、いろんな思いで発表会を聞いていました。みんな12人が成長したことは間違いなくて、そのことは教員にとっては、うれしいことでした。1年前の今頃、みんなのGPAのスコアを見て少し不安になっていた(笑)ことを思い出して、1年よくがんばったよねーって思ってしみじみしてしまったり。卒研発表会は一つの過程にすぎないのだけど。大学院に進学する人は、学会発表、論文発表をしていくと、また違った成長を見せていきます。未知のことを明らかにするという科学のいいところを体験してほしいし、仕事を完成させるという一つの体験をしてほしいです。その体験ができるように一緒にがんばりましょう。就職する人は、卒研の体験を、仕事の進め方の一例として、活かしてほしいなあと思っています。

いしみず。