【研究成果】ペクチンRG-Iラムノース転移酵素の多様性
植物細胞壁ペクチン成分ラムノガラクツロナンI(RG-I)というドメイン構造があります。2018年にRG-I生合成酵素を見つけたので、次はこの酵素遺伝子をノックアウトしてRG-Iができなくなる変異体植物を作り、RG-Iの植物での機能を探ろうと、研究を計画しました。ゼニゴケにはこの遺伝子が一つしかないと考えられたので、ゼニゴケを使って、この酵素遺伝子ノックアウト植物を作成しました。しかし、RG-Iはまったく減っていませんでした。想定どおりに研究が進まなかったわけです。そこで、このラムノース転移酵素遺伝子が他にもあるのではないか、との考えに至り、探したところ、他にもいっぱいゲノムにあった、シロイヌナズナには10遺伝子あった、ということがわかりました。
この論文は、想定どおりに進まなかった実験によって、研究の新たな方向性が生まれ、成果になったものです。実験が想定どおりに進まなかったことを嘆かないで、想定どおりに進まなかったということは新たな発見が隠れている、という発想を持って、研究を進めるのがいいのかなあと思います。
この論文はBussarin Wachananawatさんの学位論文の骨格になる論文です。よく頑張ったことが論文になってほんとよかったです。竹中さんのサポートは絶大でした。現在博士論文執筆中です。がんばれMint。掲載された雑誌はFrontiers in Plant Science。流行りのオープンアクセスの雑誌です。
この研究は多くの方々に協力いただきました。特に農研機構の黒羽博士、神奈川大学の西谷先生には、たいへんお世話になりました。石水研との成果の出し具合が50/50くらいの共同研究で、黒羽さんの実験技術がなければ、到達しなかった発見でした。黒羽さんの実験のうまさには驚かされました。他に、大阪大学の梶浦先生、北海道大学の楢本先生、東北大学の横山先生、神戸大学の石崎先生にもたいへんお世話になりました。ありがとうございました。