立命館大学 石水毅研究室

石水研通信

【研究成果】UDP-アピオースの調製法を確立 アピオース転移酵素活性を検出

Fujimori, T., Matsuda, R., Suzuki, M., Takenaka, Y., Kajiura, H., Takeda, Y., Ishimizu, T. Practical preparation of UDP-apiose and its application for studying apiosyltransferase. Carbohydr. Res. 477, 20-25 (2019)

 植物の成長にはホウ素という元素が必須です。このホウ素は、植物細胞壁の高次構造形成に必要なのです。植物細胞壁のペクチンのラムノガラクツロナンIIのアピオースという糖と架橋(ホウ酸ジエステル結合)を形成します。このホウ素と関わりの深いアピオース。植物に見られる特殊な糖です。このアピオースが植物に取り込まれる時の前駆体のがUDP-アピオースという化合物。UDP-アピオースは不安定で、これまで誰も単離することができませんでした。今回、UDP-アピオースの安定化条件を見つけ、その調製法を確立し、アピオースを植物細胞壁に取り込む酵素アピオース転移酵素の研究に道を拓いた、という成果です。このアピオースはセロリやパセリに多く見られるアピインという二次代謝産物にも取り込まれています。アピインは、抗酸化作用があったり、パセリやセロリが越冬するときに必要な化合物と言われています。このアピインを作るアピオース転移酵素の活性を検出することもできました。

 この研究は2013年4月に、石水研に4年生で配属された鈴木さんから始まった研究で、松田さん、藤森さんが主に貢献しました。鈴木さんは4年生ながら、UDP-アピオースを安定化させる化合物を見つけました。研究室を立ち上げたばかりの頃で、この化合物を見つけた報告を受けた時は、「立命館の学生、やるなあ!」と感心させられました。松田さんは、NMRや質量分析を駆使して、UDP-アピオースを実際に単離できたことを証明しました。藤森さんは、UDP-アピオースの安定性の定量データ(とてもたいへん)を求めたり、アピオース転移酵素の活性を鮮やかに示したりしました。3人のがんばりが形になり、嬉しく思っています。

 この成果は2019年5月18日に阪大で行われた第20回関西グライコサイエンスフォーラムで発表できました。掲載されたCarbohydrate Research誌は1965年創刊の糖質化学の伝統ある専門誌です。さあ、次はアピオース転移酵素を同定して、アピインの機能やペクチンの合成の秘密を解き明かしていきたいと思います。

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